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老舗古書店がストリートアートをフィーチャーする理由


 
東京・神田神保町にある小宮山書店は、世界的にみてもユニークな古書店だ。文学、歴史、哲学といった幅広いジャンルと並び、ファッションやアートに関する書籍が充実しているだけでなく、アート作品そのものも豊富に取り扱っているのだから。今回の「STREET ART SHOW」の出品作としてセレクトされているのは、ギャラリーさながらの膨大なコレクションのごく一部にすぎない。そればかりか、ポスター、フィギュア、ファッションプレートなど、店内はまさにカルチャーの坩堝ともいうべき様子。同店の3代目経営者である小宮山慶太さんに、その異色のスタイルとストリートアートについて語ってもらった。
 

 
——1939年創業と、神保町の古書店でも老舗。その3代目ということですが、先代、先々代の頃から、美術書やアートに強い古書店だったんですか?
「美術書も扱っていたけど、今ほどではありません。祖父や父の代までは、文学や歴史など、古書がよく売れていました。ただ、自分と同世代の友達がそういう古書を買うかというと疑問で。そこで、’90年代後半くらいから美術書や写真集を充実させていったんです。インターネットで世界が身近に感じ始めた時代。日本語がわからなくても楽しめる分野だから世界を相手にできるでしょう。もともと自分が好きな分野だったし」
 

 
——アート作品そのものを扱うようになったきっかけは?
「三島由紀夫の『薔薇刑』という写真集に出会ったこと。新版では横尾忠則が装丁に参加しています。そこで、文学、写真集、アートなど、点だったものが線としてつながりました。出演作や原作映画化のポスター、パンフレット、台本から始めて、稀覯本の文学書や生原稿も。日本一の三島コレクターなんじゃないかな、僕は。書籍という形態にこだわらず、関係性のあるものをひとまとまりで扱うようになったのはそこからですね」
 

 
——今回の展示会のテーマはストリートアートです。
「6年前くらいから海外のアートフェアにも参加するようになって、ここ3年間は毎年8〜10回くらいは出展するようになっています。そのときにコレクターやオークションなどで買い付けもして。今回の展示会は、そんなコレクションからセレクトしたものです」
 

 

 
——ずばり、ストリートアートの魅力とは?
「これまでアートに無縁だった人でもとっかかりやすいところですかね。ホームパーティーなどで自宅に人を招くことが多い欧米では、インテリアとしてアートや写真を飾って自分のパーソナリティーを表現する文化があります。日本でコレクションというと、クルマ、腕時計、洋服、靴など、外出しているときに見せるものばかり。アートをもっと身近で大衆的にしたい。そういう思いで紹介しているんです。その一環として、アートとファニチャーのコラボなんかもやっているんですよ」
 

 
——ストリート系のアーティストとの交流も盛んなんですか?
「RYCAは店の外壁に作品を描いていってくれたし、Nick Walkerも来店してくれましたね。世界的にも稀な業態らしく驚いていました。Beejoirとはダーツ友達だし、Mau Mauとは呑みに行く仲だったりします。Pure Evilさんともロンドンでお会いしました」
 

 
——日本のストリートアート界について教えてください。
「今回の展示会にも出している天野タケルさんはじめ、新しい日本の作家さんも紹介しています。アートフェア東京に一緒に出店したり。今後もそういうサポートはしていきたいですね。そもそも、若いアーティストへの資料提供ができるような書店にすることも、当初の目的のひとつだったんです。ストリートアートではないけど、ロープアーティストのHajime Kinoko君と組んだプロジェクトも進行しているところです。日本の繊細な美を表現したアートを海外に紹介していきたいですね」
 
 

 
小宮山 慶太(こみやま・けいた)
1970年、東京生まれ。幼少時にジャクソン・ポロックの作品と出会って感銘を受け、高校と大学で美術やデザインについて学ぶ。’93年に家業であった小宮山書店(’39年創業)に入社。自身のバックグランドを活かし、アート関連の分野を拡充するにとどまらず、国内外のアートフェアに年間10回は出展するなど、精力的にギャラリー活動もこなす。出版社も経営し、日本の気鋭アーティストの紹介にも意欲的。
 
 

 
小宮山書店 KOMIYAMA TOKYO
住所:東京都千代田区神田神保町1-7
営業時間:平日11:00-18:30 日曜・祝日 11:00-17:30
年中無休(年末年始を除く)
TEL:03-3291-0495
http://www.book-komiyama.co.jp
 
 
 
原稿=加藤亮介 Text/Ryosuke Kato
写真=比留間保裕 Photograph/Yasuhiro Hiruma