interview

「逆走」の中心にあったスケッチブック

Yuma Yoshimuraインタビュー

2014年冬。千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館で開催された「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」展。そこで初めて公開された、グラファイトによる素描。行き詰まり、悩む画家の”もがき”そのものが写し出されたその絵を見て、「五木田智央ほどの画家でも悩み、そしてそれを、恥ずかしがらずに見せるのか」と、勇気づけられた一人の画家がいた。Yuma Yoshimuraが彼の名前だ。



その前年まで、ドイツで個展を成功させ、南アフリカのワークショップに参加し、スペインでも個展を開催するなど飛び回っていた彼はこの時、体調を崩し制作の手が止まっていた。それは行き詰まったというよりかは、動けなくなってしまったという感じで、何も出来ない日々が出口が見えないまま続くような、そんな時だった。この美術館にも、妻に誘われてようやく足を運んだくらいだという。



「五木田さんに実際に何があったのかはわからないけれど、あれ程の画家が、カッコイイところだけでなく、こうしたグチャグチャした部分を曝け出している感じに勇気づけられました。表現することに捧げているんだなって。それから、どんなコンディションでもその時なりの何かを残したいと思って、1日1枚、毎朝スケッチブックに何かしらを描くようにしたんです。体調が悪くて2−3分が限界だとしても、自分を投影しながら」



それが、本展「逆走」の中心に据えられた何冊ものスケッチブックだ。そしてこの、2年程の”スケッチブック時代”を挟んだ前後の作品が合わせて展示されることで、回顧展とは趣の異なる、画家の苦悩と進化を垣間見せる展示となった。己の内側へと向かいながら同時に自分を客観視し、ビジュアル優先だった表現に意味とストーリを取り込み、進化していくYuma Yoshimuraの生き様が凝縮されていた。



止まっていた手が動きはじめ、個展も再開したYuma Yoshimura。2017年の「beyond the shape」展(Calm&Punk Gallery)と今年の「まぎれこんでしまえば」展(QUIET NOISE)を経て、その先についても既に描き始めている。



「再開した最初の個展では、振り出しに戻って表現を極限までそぎ落としたので、言ってみれば生まれたばかり。いまの作品が個体だとしたら、広がりや関係性、それから密度について考えています。子供が社会に出るような。そういうシリーズをやってみたいですね」



【Yuma Yoshimura】
1980年東京生まれ。多摩美術大学絵画学科版画専攻卒業。
東京を拠点に活動。モノトーンを基調とした、丹念に描き出される平面作品には、日常生活における不確かさや混沌といった感覚を反映している。ドイツや南アフリカ、スペインなどで個展を開催したほか、直近では「beyond the shapes」(Calm&Punk Gallery、東京、2017年)や「まぎれこんでしまえば」(QUIET NOISE、東京、2018年)を開催した。 
http://yumanizumu.jp/

2018年10月16日(火)〜11月16日(金)
TAKU SOMETANI GALLERY(馬喰町、東京)
Yuma Yoshimura solo exhibition「reflection in a squall」
開催予定


原稿・写真=小野光陽
Text&Photograph/Koyo ONO
※一部敬称略